【会計Q&A:為替リスクの管理(第2回:為替差損益の推定)】

Q.昨年の急激なペソ高により、私の会社も事業計画にくるいが出てきている上に、決算期が終わって財務諸表で為替差損益がどれだけ出るのが、とても不安です。為替変動の影響はどんなふうに管理したらよいのでしょうか?

A.昨今のペソ高局面においては、@為替実現差損益の発生と、A事業損益の悪化が、主な影響として現れてきているのではないでしょうか?前回は過去の財務諸表から、自分の会社が為替の変動でどのような影響を受けるのか、また、どういった為替差損益(=リスク)の種類があるのかについて述べさせていただきましたが、今回は特に為替実現差損益の発生について、解説させていただきます。(なお以下の方法は非常に簡便な方法ですので、必ずしも“正確”な為替差損益の発生を計算するものではない点ご注意下さい)

 

2.損益計算書を「原通貨」に分解してみましょう。

損益計算書の大きな項目としては、「売上」「原材料費」「労務費」「その他販売管理費」といったものがあります。まずこの項目別に、どのような通貨でそれぞれの項目が構成されているのかを表にしてみます。例えば、ある会社で、以下のようなデータが得られたとしましょう。

「売上」:USD建(100%)、「原材料費」:売上高比率(30%)、USD50%)、Peso50%)、「労務費」:売上高比率(30%)Peso100%)、「その他販売管理費」:売上高比率(20%)Peso100%)利益率(20%)とします。

この会社がペソ会計をとっている場合(※実際にはこのような場合はドル会計を採用するべきだと考えられますが)、為替変動の影響を簡単に試算してみますと、まず売上高で得た100のドルから、原材料の支払いで使うドル(1530%の売上高比率×原材料のドル比率50%)を除くと手元には一年間でドルが85残ります。つまり損益計算書上、ドル−ペソの変動を受ける部分は大まかにはこの差し引き85のドルということがいえます。

 

3.為替実現差損の試算

さて、この残ったドル(85)から、為替実現差損が発生するかということなのですが、この会社の場合は売掛金の発生から回収までの期間でおこる為替差損がもっとも大きいと推測されます。売掛金からの為替差損については@売掛金の回収期間とA為替変動の期間の二つがポイントとなります。

まず、@の回収期間についてですが、極端な例として、売上が発生した翌日に回収しているのであれば、売上に関する実現差損益は、殆ど発生しません。売上に関する実現為替差損益は実は売掛金の発生と回収の期間によって起こるものなので、回収期間が短ければ実現差損益の発生は抑えられることになるのです。次にAの為替変動期間についてですが、これも、じわ~っと為替の変動が続く方が、実現為替差損益の発生が大きくなります。やはり極端な話ですが、期中は殆ど為替が動かずに、期末の最後の一日で為替が動いた場合には、実現差損は殆ど発生しません。この場合期末の最後の一日に回収された売掛金のみが、実現差損を認識するからです。

こうした、特殊な場合を除いて、期中平均的に為替が月に1%ずつペソ高になったとして、売掛金の回転期間が3ヶ月とした場合、上の例で試算をしてみますと;(85÷12ヶ月:一ヶ月の売掛金発生)×(1%×3ヶ月:3ヶ月間の為替変動幅)で一ヶ月間の為替実現損が0.21と求められ、これに12ヶ月をかけた2.55が実現損として予測されることとなります。月に1%のペソ高は元のレートを1ドル=50ペソとすると、一ヶ月に0.5ペソ、1年で6ペソのペソ高ということとなり、約44ペソに進んだケースに類似しています。

為替実現差損発生に関わる上記の式を一般化すると(一ヶ月のドルの収入−支出)×為替変動率(月間)×売掛金回収期間×12ヶ月となりますが、重要なポイントは「売掛金回収期間を短くすると為替実現差損益の発生リスクが少なくなる」という点です。

 

ところで、この実現差損の試算の数値が実感と合っていない。。という感覚をお持ちになったかも知れません。実は、この実現差損はあくまで、売掛金として会計上記帳されてから、回収されるまでの期間の差額なのですが、実際の実感として、もともと1ドル50ペソで計画をたてていたのに、1年間で44ペソまでペソ高が進んだ、という影響のほうを実感として感じるために起こるものなのです。これは事業計画上の為替リスクと呼ばれるものなのですが、この差と評価差損益の影響については次回、為替リスク管理の最終回でご説明させていただきます。